これから創業を始めるあなたのために②|創業にあたっての必要な基礎知識

この動画はこれから創業を始めるまたは創業を考えているあなたにとって、「どのような準備が必要」かをお伝えする内容となっています。当動画が創業を考えている方のお役に立てれば幸いです。
今回、創業をテーマとした第2節では事業を始めるにあたって、個人と法人はどっちが有利か、事業に関連する税金、創業時に必要な届出、従業員を採用する際のポイントについてお話します。特に「個人事業」が良いのか?「会社組織」が良いのか?を中心にお話しします。なお、「会社組織」には株式会社・合名会社・合資会社・合同会社の4種類あり、株式会社は株式上場を含めて第三者の株式の売買が可能な公開会社と株式を売買もしくは贈与するときに他の株主に許可を取る必要がある株式譲渡制限会社があります。今回は多くの中小零細企業が行っている「株式会社の株式譲渡制限会社」と「個人事業」を比較検討していきます。

法人と個人はどっちが有利か

まず最初の比較は、創業の手続きとその費用です。
「法人」は定款の作成と登記が必要となります。「個人」は一般的には事業を行う住所地を管轄する税務署に「開業届」を提出することで事業を開始するができ、登記等の手続きの必要はありません。なお、「法人」の定款とは創業した会社の商号や事業の目的、また決算月や役員の人数など事業を行うための条件として会社運営上の最低限のルールを記載したものです。また、登記とは、定款に記載された商号や本社所在地などを一般に開示できるようにすることです。これは会社の概要を一般公開することで会社の信用を図るとともに、安心して取引ができるようにすることを目的としています。
取引先が会社組織である場合など、取引契約を行う場合や名刺交換などの機会が多い場合は「会社組織」のほうが信用度が高い傾向があります。しかし、飲食店や理美容など、店舗を持ち、個人客を相手とする場合は「法人」と「個人」の差はありません。また、金融機関からの融資を受ける場合、「法人」のほうが個人の生活費との区分けがはっきりするため比較的融資を受けやすい傾向となっています。
経営者の給与については、「法人」の場合は毎月定額での支給となります。「個人」の場合は経営者への支給は給与とは考えず、1年間の利益となる事業所得が経営者への給与となります。
事業を「法人」で行うか「個人」で行うかについて大きな違いの一つとして、社会保険の加入の有無があります。「法人」の場合は社会保険・厚生年金への加入が義務となっており、本人負担と会社負担が折半されるため、費用負担が大きくなります。「個人」は従業員を加入させることは任意でできますが、経営者や家族従業員は各々が国民健康保険に加入するすることになります。
「法人」は「接待交際費の限度額」があったり、法務局へ「定期的な役員の改選登記の届出」が必要となりますが、「個人」はありません。「法人」は法人名義で保険加入することで経費となるなど、「個人」と比較して経費の範囲が広くなります。また、後継者への「事業承継」が「法人」はスムーズに行えますが、「個人」は親子以外の場合は難しい面が多くあります。

個人と法人の一番の違いは「事業に係る税金」

「法人税と所得税」
「法人」は利益をもとに法人税が課されます。利益が800万円以下は15%で、それ以上の利益については23.2%となります。「個人」は利益をもとに所得税が課されます。税率は5%から45%が課されます。従って、利益が多額となる場合は、法人税の税率のほうが低くなることとなります。

「市県民税」
「法人」は法人市民税、法人県民税が課されます。どちらも利益に応じ一定の割合を課される所得割額と赤字でも課される均等割額があり、赤字でも最低71,000円の納税が発生します。「個人」も「法人」と同様に利益に応じて課される所得割額と均等割額がありますが、弊社のある愛知県刈谷市では赤字でも課される均等割額が5,500円となります。

「事業税」
「法人」には利益をもとに3.4%から6.7%の法人事業税が課されます。「個人」は利益から290万円を控除した金額をもとに3%から5%課されます。その他に「預貯金の利息」があります。「法人」も「個人」も利息額の15.315%の税金が課されることについては変わりはありません。しかし「法人」の場合は、法人税等の前払として決算時に精算されます。「個人」はこのように精算されることはありません。

事業を行うにあたって課される税金について、そのほかに「消費税」「固定資産税・償却資産税」「自動車税」「印紙税」などがあります。これらは「法人」「個人」での違いは一般的にはありません。

では、税金面で事業を行うにあたり「法人」「個人」のどちらが良いでしょうか。
基本的には利益が大きくなれば「法人」が有利となります。しかし、先ほどお伝えした営業面での判断や、事業の将来展望をもとにして判断することが大切であり、税金面での有利不利の判断は優先順位を落として考えるべきです。

創業時に必要な届出

続いては、創業時にどのような届出が必要かを説明します。 「法人」を設立した場合には公証役場で定款の認証を得て、法務局に登記を行います。これには20万円程度の手数料がかかります。登記簿謄本が出来たら、取引用の銀行口座を開設するとともに税務署等へ設立した旨の届出を提出します。「個人事業」でスタートする場合は、「法人」と違い登記等の手続きの必要性はありません。税務署に開業届を提出することで完了となります。その後の確定申告のことを考慮すると、銀行で事業用の専用口座を持つことをお薦めします。
「法人」「個人」どちらも従業員を雇用した場合は、年金事務所や労働基準監督署などへの届出を行います。なお、「法人」は年金事務所への届出は必須となります。そのほかに飲食店等の事業開始には、保健所への届出が必要となり、運送業を開始する場合は運輸局への届出が必要となります。行う事業によっては各種の許可が必要となりますので、事前に確認しておきましょう。

従業員を採用する際のポイント

続いては、事業を始めるにあたり重要なこととして「従業員の募集と採用」があります。飲食店などをはじめとした従業員を雇用する必要がある事業について、人件費は経営に大きな影響を与えます。人件費は、多くの事業にとって経費の中でも最大のウェイトを占めるため、採用にあたっては親族やパートの活用を検討し慎重に行いましょう。また、従業員やパートなどの募集については労働条件の交付や各種社会保険などの大切な事務処理があります。
【募集】について
従業員やパートの募集方法にはハローワークへの登録、新聞チラシやフリーペーパーによる求人またインターネットの求人サイトが一般的です。最近ですと派遣会社からの人材派遣や紹介会社による即戦力の人材の雇用など、幅広い募集募集方法があります。

【採用】について
募集に応募いただいたら書類審査や面接など採用試験を実施して採用するかどうかを決めます。特に面接時には経営者の考えをよく説明する必要があります。そして採用が決まったら「労働条件」を文書により交付し、お互い誤解が無いようにしましょう。また、最近は外国人労働者の雇用が増えてきています。不法就労者でないかを、パスポートのビザで確認しましょう。なお、パートを含めて常時10名以上の労働者を雇用する場合は就業規則を労働基準監督署に届け出なければなりません。就業規則は労働条件についてのルールを定めたものとなります。労働基準法に沿ったものでなければならないため、最初は専門家に相談するほうがいいでしょう。また、「法人」など、社会保険に加入する場合は各種届出が必要となります。 必ず事前にどのような届出の必要があるか確認をしておきましょう。

【退職】について
従業員が退職をした場合、退職金を支給する場合があります。支払義務はありませんが、退職金を支給する場合は事前に規定として支給ルールを作成しておくことをおすすめします。また退職金には「中小企業退職金共済制度、通称中退共」や「特定退職金共済制度」のように国からの助成制度があったり、商工会等が運営している積立制度があります。解雇などによるトラブルが年々増えていますので、退職金の取り扱いなどは規定でしっかりと明文化しておくようにしましょう。

今回のまとめと次回目次

今回は、創業にあたり「個人」か「法人」どちらが良いのか?や従業員を採用する際のポイントをお話ししました。次回は、創業計画の策定について具体的にお話ししていきます。ご静聴ありがとうございました。